時間軸 左から?上から?右から? -もテモテ通信 2021年秋 ハロウィン号より-
以前、「物語が理解できない」という話しをしましたが、「記憶することが困難」「能動的記憶が出来ない」という問題が自閉症スペクトラムを持っている者には比較的共通しているようです。
記憶が出来ないというと驚かれますが、意識的に何かを覚えようとする行為がとても困難です。
例えば簡単な漢字一つを目の前に出されて、覚えましょうと言われてもほとんど不可能です。いまだに主の祈りは覚えられていませんし、努力しても覚えることが出来ません。
私の記憶はどうなっているのかというと、記憶の一つ一つが一つの画像として蓄積されているようです。
夜の星空のような感じです。その一つ一つの点の記憶の中から必要な記憶が自動的に目の前に拡大して現れて思い出す感じです。自動的に目の前に拡大して現れなければ、記憶の彼方に消え去っているか、忘れた頃に突然フラッシュバックとして現れることになります。記憶のコントロールも結構難しい状態です。
電光掲示板がいつも頭の中にある感じかも知れません。ですからいつも何かを考えていて、ひらめいたり、悩んだりをつねに繰り返しています。
そんなイメージで脳内に記憶が散らばっているので、時間軸というものが明確に存在しません。点の記憶を繋げる物差しがないのでしょう。
明確な時間軸がないために、歴史のような時間軸を中心に進む事柄は全く歯が立ちません。
縦書きの日本語で書かれた本は、右側から時間軸が進んでいます。
横書きで書かれた本は時間軸が左から右に進みます。
これだけでも脳内で混乱が起きて、書かれている出来事を脳内のどこに記憶すれば良いのかわからなくなり、理解できずに記憶することが出来ません。その上、べた書きになっている文章は、時間軸が整理されずに書かれていますから、そもそも何がなんだかわからない状態です。
そして、年表になると、上から下に時間軸が記されているものがあります。
また15世紀が1400年代といわれると、この見た目の数字が合っていない状態が混乱の元です。
左から始まる時間軸、右から始まる時間軸、そして上から始まる時間軸。表記上の数字の不一致。
これらの情報を脳内で整理することが出来ません。
ただでさえ時間軸を持っていない上に、様々な時間軸で表記される文章を相手にすることは、とても難しいことが良く理解できると思います。
歴史が良く理解できないのは、時間軸を整理することが出来ない、様々な時間軸を統合する手段を持っていないことに起因するのかもしれません。
その上で、歴史は事実が明記されていないことも多く、概念を説明されてさらに混乱するのだと思います。
例えば「そのように考えられています。」という表現は理解を困難にする表現の一つです。
時間に沿って話す事は出来ますが、その時は脳内にスライドショーが始まり、そのスライドショーに沿って話していることになります。ですので勝手に現れるスライドショーの中に欠損があると、無かったことになってしまい伝える必要のある事柄をうっかり忘れてしまうことが多々あります。物忘れが多い理由はこれが原因でしょう。
自分の話したことを覚えていないことが多いですが、同じ記憶を元に話すのでだいたい同じ内容を話すことが出来ていると思います。話すたびに言うことがコロコロ変わることはありません。
皆さんは時間軸をどのように整理しているのでしょうか。