復活の体験をする大斎節
昨晩、お風呂に入って湯船から出たらそのまま貧血になった。
熱めの風呂で寝てしまっていたのだと思う。
あまり記憶はないけど、十分に湯船に浸かったから出ようと、湯船から出て風呂椅子に座ったら貧血が始まった。
ヤバそうだったので「よっこー」と妻の名前を呼んだけど、聞こえるところにはいないと思ったから、ダメかもと思いながら椅子に座りながら姿勢が崩れないようにバランスを取っていた。
湯上がりの多少の貧血なら全くなかったわけではないので、5秒とか10秒程度で元に戻ると思っていたけど、どんどん意識が遠のいていくのが自分でもわかった。
ヤバいなぁと思いながらもどうしようも出来ないので倒れないようにだけ気をつけつつ、踏ん張っていたら妻が来た。
「よっこー」という声を聞いた息子が、妻を呼びに行ってくれていたらしい。
妻が後ろから支えているんだけども、自分ではどうしようもなくなっている。
一応「貧血みたい」と言いつつも、なにか会話をしていたような気がする。
だんだんと意識が遠のき、息苦しくなってきて、いよいよダメかもと思い「救急車を呼ばないとダメかも」と言ってみた。
湯上がりだから裸のままだし、洗い場の椅子の上でぐったりしているから、参ったなぁと思いつつ救急隊に担ぎ込まれる様子をシミュレーションしてる自分がいる。
救急隊員が女性だったら困るなぁとか、部屋までストレッチャーは入ってこられないから、どうやって裸のおっさんをストレッチャーに乗せるんだろうかとか、どうでも良いことを思いながら、いよいよ死にそうなほど目の前が真っ白になり、呼吸が苦しくなった。
いよいよこのまま意識が無くなるかもという所まできた。
救急法を学んでいるから応急救命対応は出来るけど、自分の救命処置は結構大変だとここで気づく。
一応声には反応しているし、呼吸もあるから、次は何だ?と思ったら回復体位だった。
妻に、横にならせてとお願いして、洗い場の床に裸のまま、もちろん濡れたまま横になった。貧血だからとにかく血液を頭にと思って「足を上に上げて足を」とお願いした。
下半身丸出しのまま、おっさんが洗い場で横になって足を上げている。なんて格好してるんだオレはと思いながらも、真っ白な眼前が、少し色付いてきた。
ふと、今の血中酸素濃度はどのくらいだ?と好奇心が湧いてきて、妻に「血中酸素濃度を測る機械を持ってきて、カメラも」って。
もちろん、まだ全身裸で洗い場に横たわっているおっさん状態。下半身丸出しです。
指先に血中酸素濃度計をはめて数値を見たら、心拍数は65、血中酸素濃度は85だった。
横になって少し時間が経っていて85だったから、ヤバかったときはもっと下がっていたかもと考えると、ほとんど死に体だったかもしれない。
回復体位をとって指に計測器をはめたときの自分の手が蝋人形のように真っ白だったのは覚えている。
オレ結構やばいかもと思いながら、徐々に意識が回復してきて、会話も安定してきて、血が行き渡っていく感じがしてきたので、回復しつつあることを実感した。
しばらくそのままの姿勢で安静にして、自力で起き上がれるくらいまで気力が湧いてきたので、妻に手を持ってもらって起き上がった。
写真は撮ってもらえてなかった。それどころの様子ではなかったらしい。
とりあえず立てるようにまでなったので、体を拭いて服を着てベットに横になった。
部屋は暖かいのにもかかわらず、とにかく全身が寒い。
体の血の気が引いて血液が行き渡っていない様な感じ。
胸の苦しさというか、気持ち悪さが残っているので何か飲むというのもちょっと難しいように感じたので、とりあえず横になりながら様子を見る。
30分位横になっていたらずいぶんと回復してきた。
その間、心筋梗塞や脳梗塞そのほか目に見える不具合がないかと、手指の感覚を確かめたり足先まで感覚を確かめたりしながら異常がないことを確認した。
しびれもなく、相変わらずよく喋り、おかしな会話にもなっていないということでとりあえずなんとかなるかなぁという感じ。
その晩はそのままベットのなかで眠りについた。
これを書いているのは翌日の午前中。
胸が苦しく感じるようモヤモヤ感はまだ残っているけど、思いのほかスッキリした状態で目が覚めた。
毎朝シャワーを浴びているので、いつもの通りシャワーを浴びて出てきたら、妻が心配そうに待っていた。
ここ数ヶ月、両肩がとても凝っていて上も上がらない状態だったんだけども、今朝からスッキリと痛みがなくなり腕が上がるようになっていた。
その上、つきものが取れたような爽快感を感じるようになって、えらくスッキリしている。
妻いわく「スッキリした顔をしている」らしい。
風邪からの病み上がりのようなスッキリ感を体験している。
自分では意識が最後まであったような気がしているけれども、気を失っているときは記憶がないから自分の様子は良くわからない。
運良くか幸いなのか、まだ呼ばれていなかったようで今こうして記録している。
30年ほど前、現場仕事中にエア釘打ち機でうっかり足の甲に釘を打ち抜いたことがある。
十字架にはりつけにあったイエスと同じ足の甲に釘を打ち抜き痛い思いをした。
妻は「長髪を乱した裸のおっさんが蒼白の顔で横たわっている姿は、十字架から下ろされたイエスのようだった」と。
だから「カメラ」と言ったんだけど「それどころの様子じゃなかった」と言われた。
復活まで三日も必要なかったけど、なんか復活した気分にはなっている。
30年スパンでイエス体験をするのだとすれば、30年後に昇天だとすると先が長すぎてつらいわぁ。